きっかけは祖母の言葉

全ては8年前、私の祖母が転倒し、手を骨折したことからはじまりました。怪我が原因で、祖母の手は動きづらくなってしまいました。その怪我以降、祖母は外出することが目に見えて減りました。 心配になった私は、外出を控えるようになった理由を祖母に尋ねてみました。祖母の答えは、 「外に出て買い物しても、財布の中の小銭やカードの扱いがこの怪我した手だと難しいんだわ」 というものでした。 私は、意外な答えに驚きました。まさか財布が、祖母の外出を妨げているとは想像もしていませんでした。 改めて財布というものに注目してみると、確かに自分でも小銭や紙幣、カードの出し入れに手間取ることがあると気付きました。ましてや、怪我などで手先に不自由がある方や、高齢の方であれば、買い物のたびに財布を使うことが億劫になるのは無理もありません。 そこで、私は「誰もが使いやすい財布」を作ろうと決意しました。 当時の私は、理系の大学三年生でしたが、やりたいことや目標も見つからず、授業の単位を取得するだけで精一杯でした。しかし、財布の開発は、「やってみよう!やってみたい!」という使命感と好奇心を感じることができたのでした。

開発と失敗

使いやすい財布を作るために、私はまず、 「小銭をいかにしてとりやすくするか」 という課題に向き合うことにしました。 私はこの課題を解決するために、日本で使われている6種類の硬貨(1円、5円、10円、50円、100円、500円)を選別する小型の装置を設計しました。 当時大学4年生だった私は、大学院入試勉強や研究の傍ら、時間をやりくりして装置の図面を描きました。 そして3Dプリンターで、最初の試作品を作りました。試作品はそのまま財布に装着できるものではなかったものの、6種類の硬貨を確かに選別する機能を備えていました(特許番号2015-014832)。 次に私は、この硬貨選別器を財布に応用できるように改良しようと考えました。 しかし、そう考えてはいたものの、大学院生となった私は研究と就職活動に忙しい日々を送っていました。 結局2年間は、財布の製作に全く取り組むことができませんでした。 その後、社会人となった私は、休日を利用して財布をと改めて決意しました。開発に必要な高性能パソコンも購入し、私は再び財布の開発を始めました。 少しずつアイデアを練り、開発は進められました。自宅近くを散歩しながら、頭の中でより良い硬貨選別器の構造を何度も思い描きました。 入社してから2年半の間に、3Dプリントで作った硬貨選別器の試作品は約20個にまで達していました。 そして、とうとう硬貨選別器が搭載された長財布が完成したのでした。 長い時間をかけて製品が完成した嬉しさは、格別なものがありました。私は、はやる心を抑えつつ、早速その財布を使用してみました。 「あれ? 全然使いやすくない。」 私は、思ってもみなかった結果に愕然としました。 硬貨選別器自体にも改善の余地はありましたが、そもそも硬貨選別器の仕組みは、財布としてはあまりにも複雑過ぎ、実用には向かなかったのでした。 私は絶望しました。時間と労力を無益に費やしてしまったと思いました。 何が間違っていたのか。 絶望感の中、突きつけられたのは、 「使う人の立場に立っていなかった」 という自分の過ちでした。 硬貨選別の機能にこだわるあまり、 「誰もが使いやすい財布を作る」 という、本来の目的をいつの間にか見失ってしまっていたのでした。 とても落ち込んでいたものの、私はまだ財布の開発を諦める気にはなれませんでした。 私は、使う人の立場に立って開発することを改めて自分に誓いました。 そして、再び一から財布を作り始めました。 「誰もが使いやすい財布」、KIND Walletの製作がようやく始まったのでした。

KIND Wallet の誕生

私は、徹底的に使う人の視点に立って、これまでにないほど使いやすい財布の開発を目指すことにしました。 市販されている財布を調べてみると、小銭やお札、カードのどれかが取り出しやすいことを謳った財布はありましたが、それら全てが取り出しやすいというものは見当たりませんでした。 そこで私は、 「財布の中の全てが取り出しやすい財布」 の開発を目指すことにしました。 上野・御徒町の財布業者のもとへ繰り返し足を運んでは、アイデアを伝え、試作品を製作してもらいました。 実は、硬貨選別器をつけた財布の開発は失敗に終わったものの、その際に私は上野・御徒町の財布業者に出会うことができたのでした。 財布業者の方々は、革製品に関して全くの素人だった私にアドバイスを与え、また無謀な要望に対しても真摯に応えてくれました。 そして、いくつもの試作品を経てついに完成したのがこのKIND Walletです。 最も大事にした使いやすさはもちろん、シンプルで高級感のある見た目、耐久性など、使う人の立場に立ってこだわり抜いた自信作です。 使う人から見ると、とてもシンプルで使いやすい財布に仕上がっていますが、実は複雑な作りをしています。豊富な経験と高い技術を誇る、上野・御徒町の革物メーカーの力があってこそ実現した財布です。

開発者プロフィール

首都圏在住。既婚。三重県出身。好きな場所は長崎。工学系の大学・大学院を卒業後、機械関連のエンジニアとなる。大好物はハンバーガーとラーメン。趣味はスポーツ観戦、youtubeの視聴、そして囲碁。飲み込みが遅いものの、根気強い性格。ツイッターリンク→ @fox_plus2

はじまり

8年の歳月をかけてこのKIND Walletは形になりました。この8年間はあっという間でした。全ては8年前に私の祖母が転倒した際、手を骨折したことからはじまりました。 その怪我以降、祖母の手はそれまでと比べて動かしにくい状態となり、祖母は外出を控えるようになりました。 あまりにも周囲が心配したため、私は外出を控えるようになった理由を祖母に尋ねました。すると祖母は、「外に出て買い物しても、財布の中の小銭やカードの扱いがこの怪我した手だと難しいんだわ」と回答していました。 日ごろの何気ない日常生活では気が付かなかったものの、 小銭、紙幣、そしてカードはかさばるものであり、私自身その取り扱いが簡単ではないことに気が付かされました。 ましてや、怪我をした高齢の方の場合、財布を使用することが億劫になることは容易に理解できました。そこで、私は少しでも既存の財布以上の使い心地を提供できるような財布を作る決意をしたのです。当時はやりたいことや目標も無い、授業の単位を取得するだけで精一杯な理系の大学3年生だった私でした。しかし、「これは自分でやってみよう!やってみたい!」と大きな使命感を抱くことができたのです。

開発と失敗

使いやすい財布を考えるにあたり、先ず着目したのが、「小銭をいかにしてとりやすくするか」ということでした。そこで、日本の6種類の硬貨(1円、5円、10円、50円、100円、500円)を選別する小型の装置を設計しました。大学4年生となっていた私は、大学院入試勉強や研究の傍ら、隙間時間でなんとかその図面を作成することができました。そして3Dプリンターで、最初の試作品を作成しました。そのまま財布に装着できるような代物ではなかったものの、6種類の硬貨を確かに選別する機能を保持しておりました(特許番号2015-014832)。次に、この硬貨選別器から財布へ装着できるような形状を製作することにしました。
そう決めたものの、大学院生となった私は、急がしい研究と就職活動で2年もの間、財布の製作を何一つ進めることができませんでした。また、「お金が無いから進められない」と言い訳していた自分がいたことも認めざるをえません。その後、社会人となった私は休みの日は必ず財布の開発に注ぐことを改めて決意しました。入社してから3ヶ月で、当時ではかなりハイエンドな3DCAD(3次元的にコンピュータで設計するソフト)用パソコンも購入しました。そしてようやく財布へと装着できる硬貨選別器の開発が開始されました。
入社してから2年半の月日が流れていました。それまでに少しずつアイデアを練りながら、開発は進められました。休みの日には自宅近くを散歩しながら頭の中でより良い硬貨選別器の構造を何度も思い描いていました。3Dプリントされた硬貨選別器の試作品のパーツは20個弱にも達していました。そして、とうとう硬貨選別器が搭載された長財布が完成したのです。「やったー!」そう思ったあのときの嬉しさは特別でした。勝手に踊り出す心を抑えつつ、早速その財布を使用してみました。「あれ?まったく使いやすくない。」硬貨選別器自体に改善の余地があったことは事実だったものの、それ以前に財布としてあまりにも複雑過ぎたのです。
たどり着いた先の残念過ぎる結果に絶望しました。無駄にしてしまった日々に何とも言えない切なさが込み上げてきました。ユーザの視点にこれまで立てなかった自分の独りよがりな考えを認めざるを得なかった日々でした。財布製作自体を諦めかけていのものの、「まだ諦めたくない。」そう思っている自分がまだ残っていました。そこで、あまり自暴自棄にならないためにもここまでの自分の成果を自分で認めてあげつつ、0ベースから財布の製作に取り組みました。ユーザにとって優しい財布、KIND Walletの製作のはじまりでした。

KIND Wallet の誕生

今回は徹底的にユーザの視点に立って、既存の財布の中で最も使いやすい財布の製作を行うことにしました。従来の財布はカードだけ取り出しやすい、小銭だけ取り出しやすい、あるいはお札だけとりだしやすいものは既に存在していたものの、全てが取り出しやすいものは見当たりませんでした。そこで立てた目標は、「シンプルな構造で財布の中の全てが取り出しやすい構造の財布の製作」でした。それからは上野・御徒町の財布業者のところへ何度も足を運びながらアイデアをお伝えし、試作品を製作していただきました。革製品に関して素人であった私にアドバイスして下さり、またいつも無謀な要望に親切に対応してくださったことには感謝しきれませんでした。そして度重なる試作品の果てにできあがったものが現在のKIND Walletです。使いやすさを追求した反面、財布の構造自体は他に類を見ないぐらい複雑なつくりをしています。技術溢れる上野・御徒町の革物メーカーの力によって実現できた自信ある財布です。